夜に咲く花は香り高く美しい。その香りで虫や人を惹きつける。
そして殆どの花たちが白い花びらを持つ・・・
月の光の中で、白い花びらはどんな色のものより鮮やかに美しい・・・
月下美人
サボテン科の「月下美人(ゲッカビジン)」という植物があります。
夜になると咲き始め、朝にはしぼんでしまう一夜限りのはかない花です。
英語では夜の女王とも呼ばれておりコウモリが花粉を運んでくれるそう。
多肉質の葉に見える茎にトゲはありません。
夏の夜に、香り高い白色の大きな花を開くが、数時間の命。
平らな茎の節目にぽつんと小さな突起を見せ、徐々に膨らみつぼみとなる。
つぼみが開きはじめると、花弁の間からおしべがするすると伸び
純白の大輪の花を咲かせる。
花弁の先が開き始めると青臭い匂いが立つ、それは次第に芳香となる。
夜の7時頃から咲き始め、真夜中にはしぼみ始める。
そして朝にはすっかりしぼんでしまう、はかない花です。
花の大きさ、強烈な芳香は翌日も部屋いっぱいに満たされ申し分ないです。
明るい部屋に移しても、きまって夜7時頃に咲き始めるのが不思議です。
満月の夜に咲くとも言われますが、それ以外の日でも咲いているとのことです。
「現代の明るい夜のもとでは花も勘違いをしているのかもしれない。
いにしえは月の明るい夜に咲いていたのかもしれない。」
ということにしたいですね。
ヨルガオ(シロバナユウガオ、ヤカイソウ=夜開草)
闇の中でほの白く咲くこの花を英語ではMoon Flowerと呼んでいます。
英名:Moon Flower
中国名:月光花
熱帯アメリカ原産のつる性1年草。日本には明治初期に渡来。
夏の夕方に、芳香のある直径10〜15cmの大きな白い花を咲かせ、翌朝しぼむ。
葉は心形で長さ10cm以上。性質は強健で各地で観賞用に栽培される。
この植物をヨルガオ属 Calonyction として、サツマイモ属から区別する説もある。
なお、園芸的にこの植物をユウガオと呼ぶことが多いですが
ウリ科のユウガオ Lagenaria siceraria とは別物
月見草(ツキミソウ)
夕方くらいから咲き始め、月の出るころに白い小さな花を咲かせます。
そして夜明けごろにはピンク色になってしぼんでしまう事から
この名が付いたのだとか。一晩だけ咲く神秘的な花ですね。
ツキミソウ(月見草)やマツヨイグサ(待宵草)は
字の通り夜開性を示していますが、やや情緒的な表現です。
白色の四弁花を夕暮れに開き、朝はしぼんで赤みを帯びる一夜草です。
黄色い待宵草・大待宵草を月見草と呼ぶ人もいますが
それは学術的にはまちがいだそうです。
月見草は生活力が弱く野生で見ることはほとんどできません。
ちなみに、太宰治が「富士には月見草がよく似合う」と書いた文章が有名ですが
太宰治が見たのは残念ながら月見草ではありません。
ツキミソウは1850年ごろに渡来しましたが、性質が弱くて
日本には定着しませんでした。
太宰治の『富岳百景』の中では
「黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えずのこった。」とあります。
そしてこれは昼間の話なのです。
太宰の見た月見草は待つ宵草だったのでしょう。
呼ぶなら「宵待ち草」のほうが似あっていると思いませんか。
一般に月見草と云っているのはツキミソウの仲間の
マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、アレチノマツヨイグサなどです。
これらは帰化植物といって、北米原産ですが、日本で野生化した植物なのです。
鉢花でツキミソウの名で出回っているのはオエノテラ・フルティコサです。
蛇足ですが、オエノテラ・スペキオサは和名を
ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)といいます。
昼に咲く月を見る花とは、考えてみれば奇妙な名前ですね。
「待てど暮らせどこぬ人を 宵待ち草のやるせなざ 今宵は月も出ぬそうな」
竹久夢ニ
露草(ツユクサ)
露草は、古名を月草(ツキクサ)と言います。
咲いたその日にしぼんでしまうので月草と呼ばれていたのだとか。
布を染めるのにも使われましたが、色があせやすくすぐ落ちてしまうので
万葉集ではその消えゆくはかなさを恋心に例えた歌がいくつかあるのだそうです。
摺るとこの花びらのような、きれいな青い色がつくため
花の絞り汁は、昔から染料とされていました。
そのため名前も、色が「着く」草、が語源とされてはいますが
万葉の昔から「月草」と表記していたようです。
ただ、この月草の染物は、水に弱くすぐに色が落ちてしまいます。
なので、表記の和歌のごとく「はかないもの・移ろいゆくもの」のたとえとして
またその発展形として「恋における心変わり」の象徴とされていました。
露草自体は、とても小さくて愛らしい花で
いつまで見ていても飽きない清々しい姿であります。
さらに、お月さまの名を持つ花であって「心変わり」だなんて、と
露草の代わりに弁護してあげたいくらいです。
月橘(げっきつ)・シルクジャスミン
夏の夜に花が咲き,ジャスミンのような香りがするのだそう。
月夜に花の香りが強くなることからこの名が付いたのだとか。
ミャンマーではこの月橘から作った「タナカ」を顔に塗って
日焼けを防いでいるそうです。