2012年10月03日

月を愛でる秋の宵 

夏空眩しい季節はしだいに和らぎ
秋色を纏った夕暮れが顔を出すようになりました。
朱に染まりゆく群青色のさまは、秋が訪れる足音のよう。
美しい秋の空に想いを馳せます。
秋といえば美しい月。
今も昔も変わらず、闇夜のしじまに輝く月。
月明かりに誘われ、秋の夜長を楽しみたい・・・。

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秋は月の季節。
他の季節に比べてもきれいに見えると言われますが
これはそう感じるだけでなく、科学的な理由があるのでしょうか?
秋の月がきれいな理由は、単に心理的な問題だけではなく
いくつかの科学的にみて正当な理由があるようです。

1つめは、秋の空気が比較的乾いている
もう少し具体的にいうと、空気中の水蒸気量が少ないということです。
これによって、大気がぼやけたりすることがあまりないため
くっきりとした月が見えます。
逆に夏は水蒸気量が多いため、どうしても
少しぼんやりとした月になってしまうことが多いようです。

また、月の高さの問題もあります。
月の通り道の関係で、実は月が見える高さは季節によって異なります。
冬の月は空高く、夏の月は割と低い位置にあります。
月が低い位置にある場合、地表付近のちりや明かりなどに邪魔されて
きれいにみることができません。また大気によって
光が吸収されるため(減光といいます) 低い月はどうしても暗くなってしまいます。
では、高い位置にあれば見やすいかというとそういうわけでもありません。
確かに大気の影響は少なく、くっきりとした月にはなるのですが
「見る」という行為からすると、高い位置にある月は見上げるのに結構大変です。
そもそも冬の寒い時期に、外で長時間月を眺めるのは
かなりつらいことでもあります。

こうしてみると、適度な高さにある春と秋の月が見やすいということになりますが
春はよく「おぼろ月夜」といわれるように、空気中のちりや花粉などが
多い季節でもあります(黄砂なども春に多いですね)。
そのため、年間でいちばんきれいな月が見える季節は
実は秋という結論になるわけです。

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秋を感じさせる夜風が吹くようになると
音色も夏の虫たちから秋の虫たちに変わってきます。
夜空に輝く月の光も冴えてきます。
すすきも立派な穂をつけて、秋はお月見をするには絶好の季節。

秋の月の光が冴えてくるのは、気温が低くなって
大気中の湿度が下がり、透明度が良くなるから。
秋の空は、夏に比べて高く感じるのも、そのせいでしょう。
また、天文学的には月の高度も関係します。
夏の間の満月は南の空に低いのですが
秋になると次第に北の空に動いて行きます。
そのために、日本のような中緯度地方から見ると
夏の満月は南の地平線に近く、大気の影響を受けやすく
鈍い輝きになってしまいがちです。
秋になると満月は空高く上がるようになるので、輝きが増していくわけです。 

もうひとつ、秋の大事なところは「収穫の季節」ということ。
農作物の収穫を手にして、家路につく夕暮れ時
東の地平線からぽっかりとのぼってくるまん丸のお月様を眺めると
なんともいえない感謝の気持ちが芽生えてもおかしくありません。
中秋の名月というのは、もともとお月様に秋の収穫物をお供えして
恵みを感謝する行事なのです。

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昔の暦(旧暦)で、8月15日の満月の時に行う十五夜。 
この中秋の名月のお月見の風習は、もともとは中国が発祥地で
いまでもアジア各地で受け継がれています。
お供えものは、日本ではススキの穂にお団子といった組み合わせがおなじみ。
お団子には必ず新米を使うという地方もあるそうです。
元祖・中国では月餅を供え、サトイモが中心です。

日本では中秋の名月から約1ヶ月後の満月少し前
旧暦9月13日に「十三夜」のお月見を行うところもあります。
十三夜の方を栗名月あるいは後の月といい、中秋の名月の方は
これに対比させて芋名月と呼んでいます。
二回もお月見をする風習は、日本独特のもののようです。 

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ところで、東から上ってくるまん丸の中秋の名月を
「満月」だと思っている人は、案外多いのではないでしょうか。
実は中秋の名月は、必ずしも満月と一致するわけではありません。

月は地球の周りを公転しているのですが、そのスピードは一定ではありません。
時にはややスピードを上げて、またある時にはスピードを緩めたりします。
これは地球の周りを回る月の通り道(軌道)が、正確な円ではなく
ゆがんだ楕円だからです。月と地球の距離は平均的には38万kmなのですが
時には40万kmまで遠ざかることもあれば
あるいはまた36万kmにまで近づくこともあります。
月までの距離は、なんと一割近く違ってしまうのです。
そして、地球に近いときには月はスピードアップし
遠いときにはスピードダウンします。
こうして、新月から満月に至るスピードが遅い時期には
十五夜だとしても満月前の月となり
逆にスピードが早い時期には満月の翌日になるわけです。 

さらにもうひとつ、月齢と日付のタイミングも問題となります。
新月の瞬間から満月の瞬間までに経過する日数は
平均すると約14.76日となります。
中秋は昔の暦で新月のある日を1日として、そこから数えて15日目です。
ですから、新月の瞬間が8月1日の日のうちの
かなり遅い時刻に起こったとすれば、当然8月15日のうちには
満月にならずに16日目が満月となるわけです。
新月になる瞬間が旧暦の1日の、どの時刻に起こるかのタイミングによっても
十五夜が満月になるかどうかに影響するわけです。
この二つの理由によって、十五夜は満月前にも満月後にもなり
天文学的な満月とはかならずしも一致しないのです。
ちなみに今年2012年は満月が9月30日。
中秋の名月も9月30日となり、満月と十五夜が一致しました。

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一年で最もきれいに月を見ることができる中秋の名月。
日頃、月を眺めることがなくても大きな月が空に浮かんでいると
思わず見とれることもあるかもしれません。
月見をするにはいくつかの条件が揃わなければなりません。
まず月が見える天候であること、そして月を遮るものがない場所にいることです。
最低この二つが揃って月を見ることができるようになります。
中秋の名月の頃に夜空に月が上がっていたなら
まずその場で一枚押さえおきましょう。
なぜなら、場所を移動している間に
月が雲に隠れて見えなくなることもあるからです。

月の光を身体いっぱいに浴びながら
遥か彼方の月に想いを寄せてみる。
月を愛でながら、秋の風流を感じて過ごす宵。
秋風と月の光を浴びながら、スローライフな宴
お月見を楽しむ時間。

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空が少しづつ高くなり、青が深まっていく様子に季節の移ろいを感じます。
夜には月がくっきりと、星の瞬きも一層美しく見え見飽きることがありません。
昔からの月にまつわる風習の中に「月待(つきまち)」があります。
十三夜や十九夜、二十三夜など
特定のかたちの月が出てくるのを待つもので
それぞれ数字や月のかたちから意味が異なり
江戸時代には娯楽としてかなり人気があったようです。 

月が暮らしの中のあちこちに登場していた昔は、今よりも身近な存在でした。
そういった歴史があるからこそ、私たちも月を見て自然とほっとしたり
満たされた気持ちになったりするのかも知れません。
月を見ていると、見守ってくれているような
受けとめてくれているような安心感にも似た想いがわいてきます。 
私達が気づいていなくても、月はいつもそっと寄り添っていてくれる・・・
日々の中に月との時間をもつことは、ほっと一息立ち止まってその瞬間の
自分を感じ、楽しむことにつながるかもしれません。
 
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十五夜の満月だけがお月見ではありません。
週末の夜など都合のよいときに秋の名月を楽しみましょう。

十五夜の満月は美しいものですが
昔からわが国では、欠けた月も満ちた月も
それぞれに名前をつけて愛でていました。
そうして今宵の美しい月の出を楽しんだのです。
月は一日一日形を変えていきます。
満ちては欠け、欠けては満ちてを繰り返すわけは
月が自分で光らずに、太陽の光を受けて輝いているためです。

月が地球の周りを約1ヶ月かけて一回りする間に
太陽に照らされた部分を地球に全部向けたり半分向けたりするため
満月になったり半月になったりするように見えるわけです。
月が太陽と同じ方向にいるときを「新月」といいます。
新月から2日経った月は「三日月」で月齢は2。

月齢とは、新月から何日たった月かを表す数字です。
7〜8日目の半月は月齢7.5で、「上弦の月」と呼ばれます。
日にちがたつと月は次第に丸く満ちていき、15日目の夕方には
東の空から丸い満月になって昇ります。これが「十五夜」。
満月は、太陽の反対側に月がいるときになるため
太陽が西に沈むとすぐ東の空から昇ってきます。
十五夜だけでなく日々移り変わる月をも愛で
「今宵の月」に名前をつけたのが日本人。
風情ある月の呼び名をどれだけ知っていますか。 

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ススキに限らず、庭の花や身近に咲く草花を「十五夜花」に見立てて飾ったり
旬の野菜を活かしたメニューや、月をモチーフにした飾り付けをしたり
満月や三日月の形に切ったレモンの皮をジュースやお酒に浮かべたり・・・
たまには、室内の照明やテレビをオフにして
闇夜にぽっかりと浮かぶ月や、涼やかな夜の秋風
静かに響く虫の声を感じながら過ごすひとときを。
十五夜花の風情を愛でながら食事や会話をゆっくり楽しんだり
ひとりでも、ゆっくりと過ごす時間を楽しむのもいいものです。
お月見に限らず、季節の行事を取り入れて
日常的に花鳥風月を愛でる暮らしは
四季の情緒をいっそうもたらし、心を豊かにしてくれそうです。

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月や自然に親しみを感じ、そこに息吹を感じることは
自分たちが自然と共にあるという在り方。
人間と自然の間に繋がりや通いを感じます。
満ちては欠けて、欠けては満ちる…日々変わる、その時々の月の美しい姿。
秋の夜長に、ただじっと穏やかに月を眺めてみるのもいいかもしれません。

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2012年10月
下弦   8日 7:33 am 
新月 15日 12:02 pm 
上弦 22日 3:32 am 
満月 29日 7:50 pm 

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2012年11月
下弦   7日 12:36 am 
新月 13日 10:08 pm  (皆既日食 オーストラリア、南太平洋)
上弦 20日 2:31 pm 
満月 28日 2:46 pm  
(既に欠けた状態で月の出となる月出帯食 インド、アジア、オーストラリア) 
(月が地球の半影を通過する月食 半影月食)

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十五夜花として利用される主な植物
キク科    シオン、ノコンギク、ユウガギクなど  
キキョウ科 キキョウ 秋の七草
オミナエシ科 オミナエシ 秋の七草
マメ科       ハギ類 秋の七草
バラ科       ワレモコウ  
イネ科      (カルカヤ) 地域により異なる植物をさす

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今月は5日に木星と寄り添って上ってくる月と
13日明け方の東の空で細い月と金星のランデブーが見もの。
そして27日の後の月の月見も楽しみたいですね。
 
pin4 10月 主な天文情報と月の暦

3日(水)・明け方、東の空で金星とレグルス(しし座)が大接近
5日(金)・深夜から翌6日の明け方にかけて、月と木星が大接近 
     ・10:00 月の距離が最遠(1.054、40万5156km、視直径29.5')
6日(土) 05:57 :月が木星の南00゚54.8'を通る ・10:44 ●月が最北(赤緯+21゚01.5')
7日(日) 13:37 月と準惑星ケレスが最接近(00゚55.0')
8日(月)・寒露(太陽黄経195度) ・10月りゅう座流星群の活動がピークの頃 ・16:33 下弦の月
     ・10月りゅう座流星群が極大(旧ジャコビニ流星群、出現期間10月7日〜10月11日)
13日(土) 細い月と金星が並ぶ  ・4:10 :月が金星の南06゚19.3'を通る 
15日(月)・新月
18日(木)・夕方、西の空で月・火星・アンタレス(さそり座)が集合
21日(日)・オリオン座流星群の活動がピークの頃
22日(月)・上弦の月
23日(火)・霜降(太陽黄経210度)
27日(土)・十三夜(旧暦9月13日)


図解 「月夜」の楽しみかた24 (講談社+アルファ文庫 C 123-1)
図解 「月夜」の楽しみかた24 

月で遊ぶ
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Posted by sara1116 at 12:55│Comments(0)clip!月見

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