2014年07月05日

七夕の夜は月明かりの下で針に糸を通す 

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間もなく七月七日。七夕です。
元来、中国での行事であったものが奈良時代に日本に伝わり
日本古来の豊作を祖霊に祈る祭(お盆)に習合したものであり
中国では、もともと「乞巧奠(きっこうでん)」という
女性が針仕事の上達を願うための行事でした。

ちょうどこの中国の乞巧奠が行われる時期が旧暦の7月ころだった頃から
同じく7月に行われていた日本の盂蘭盆会(うらぼんえ)・・・
つまりお盆の行事が重なったものであり
古くは、お盆の行事の一環としてこの七夕も行われていました。
従って、地方によっては8月の7日頃に未だに七夕祭りが開催されるところも多く
商店街に七夕の幟が立つところも残っているようです。 

◇乞巧奠とは
乞巧奠は「きこうでん」あるいは「きっこうでん」と読みます。
奠は「てん」と読む文字で、神仏に物を供えて祭るという意味を持ちます。
あまり使う文字ではありませんが「香奠(こうでん)」に使われる文字です。
ただし現在はこの「奠」に替えて「香典」と書かれることが多いので
ほとんど目にすることのない文字です(辞書を引かないと書けません)。
この「奠」がついた乞巧奠はどんな行事かというと、文字通り意味を考えれば  
「巧を乞うて神仏を祭る行事」ということになります。

本来は旧暦のお盆が行われる7月初旬、つまり現代では
8月中旬にこの七夕の儀式も行われるべきところを、この七夕だけはなぜか
旧暦の日時のまま定着し、7月7日の日にその行事が行われるようになりました。

そもそも、七夕とは何ぞやということなのですが、前述のとおり
中国ではそもそも乞巧奠という行事であり、これはかの有名な
織姫と彦星(牽牛)の伝説に由来するものです。
この織姫と牽牛の七夕伝説は、中国史における南北朝時代
つまり、北魏が華北を統一した439年から隋が中国を再び統一する589年まで
中国の南北に王朝が並立していた時期に成立したのではないかといわれています。

このころ書かれた「荊楚歳時記(けいそさいじき)」という本には既に
7月7日が牽牛と織姫が会合する夜であると明記されており
この日の夜に婦人たちが7本の針の穴に美しい彩りの糸を通し
これらの捧げ物を庭に並べて祈ったと書かれています。
つまり、七夕とは本来、中国の女性たちが手習いで作った縫い物を
天上の織姫様に捧げ、針仕事の上達を願う行事だったわけです。 

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巧を乞うとは?

◇七夕の夜には月明かりの下で針に糸を通す
 
乞巧奠行事は中国から伝わった行事で、女性が手芸の上達を願うものでした。
古い時代の中国では七夕の夜には女性たちが外へ出て
月の光の下で針に糸を通したそうです。
月の光は明るく思えますが、実際に試してみると
案外月明かりは頼りない明かりですから、きっとなかなか針に糸は通らなかったと思います。
何度も何度も挑戦することになると思いますが、その挑戦の結果見事に針に糸が通ると
巧みを得た、といって喜んだといいます。
これは七夕の主役、織女と牽牛の織女が手芸の神と考えられていたからです。
織女は牽牛と逢える七夕の日以外は、せっせと機織りしているわけですから
手芸の神と考えられるのは当然といえば当然でしょう。

七夕はその手芸の神様、織女が牽牛と逢えるめでたい日ですから
この日に祈ればきっと願いを叶えてくれると考えられたのでしょう。
この「手芸」はやがて機織りや裁縫といったものだけでなく
文字や和歌といった手習い全般の意味に拡大されて
乞巧奠は、そうした手習事全般の上達を願う行事となりました。
あの笹に飾る短冊も、文字や和歌の上達を願って
自ら書いたものを供えたものであったわけです。

笹に短冊を飾るというのがオーソドックスな作法ですが
このように笹に飾る風習は日本以外ではみられず、中国はもとより
ここから七夕の風習が伝わった台湾や韓国、ベトナムなどでもこうした風習はないそうです。
 
こうした短冊に願い事を書き葉竹に飾るという風習は江戸時代ころから始まったようです。
江戸の昔には夏の暑気を無事に越すための「大祓(おおはらい)」の意味も込めて
茅(かや)で輪をつくり、この両脇を笹竹で囲むように飾っていたそうで
現在よりももう少し手の込んだお飾りでした。

ではなぜ笹の葉だったかというと
これが中国の七夕と日本のお盆が習合したといわれるゆえんです。
日本では、古くから笹は精霊(祖先の霊)が宿る依代(よりしろ)とされてきました。
依代とは、依り代、憑り代、憑代とも書き、つまり神霊が
「依り憑く(よりつく)」という意味であり、その対象物のことです。

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◇七夕は月夜?

乞巧奠行事として、古くは七夕の夜には月明かりの下で
針に糸を通すという行為がなされたと書きました。

ここで一つ問題。
七夕の夜はいつも月が出てくれていたのか?

答えは・・・ 「いつも月夜でした」です。
(もちろん晴れていればですが)
 
これはなぜかといえば、それは皆さんも既にお気付きの通り
暦の仕組みから自明のことなのです。

七夕の行事が生まれ、拡がった時代の暦といえば
月の満ち欠けに基礎をおいた太陰太陽暦でしたから
七月七日の七夕の夜は、新月から数えて 7日目の日。
新月から数えて 7日目というと、上弦の半月の日かその前日となります。
ですから七夕の行事が行われるこの日には、日暮れの時間には上弦の月が
南の空の高いところに輝いていたことになります。

現在の七夕の行事は現在使われている暦(いわゆる新暦、太陽暦)の
7月7日に行われることが一般的になりつつありますから
残念ながら七夕の夜には常に月があるという関係は崩れてしまっています。

今年(2014年)の七夕の夜(新暦の日付での7/7)の月は
どんな具合かと見ると、新月から数えて十一日目。
古式ゆかしい七夕の夜の月に比べると大分太めの明るい月になります。
「月の光の下で針穴に糸を通す」という行事を行おうと思った場合には
少し有利な条件かもしれません。
七夕の夜、ものは試しに月の光の下での針への糸通しに挑戦して見る
というのはいかがでしょうか? 
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「七夕」と書いて「たなばた」と読むことを
不思議だと思ったことはありませんか?

七夕の節供を知らなければ「七夕」と書いて「たなばた」と読むとは難しい
というか不可能でしょう。
 
実は「七夕の節供」は節供の名前としては
「シチセキの節供」と読むのが本来で、「たなばたの節供」という読みは
七夕の節供が中国から日本に伝えられる以前から日本に元々あった古い行事と
この節供が結びついてから生まれた読みなのです。

◇七夕は「棚機(たなばた)」
七夕の節供は他の五節供(人日・上巳・端午・重陽)とともに中国から伝えられた行事です。
ところが、七夕の節供が伝来した時代にはすでに
七夕の節供の行われる七月七日には別の行事があったのです。
それが「たなばた」の語源となったといわれる「棚機都女(たなばたつめ)」の行事です。
棚機都女の行事というのは、祖先崇拝の行事で、水辺(禊ぎのためと思われます)に
小屋を建て、祖先に捧げる布を織ってこの小屋の棚に載せたというのがその内容です。
棚機都女はこの祖先に捧げる布を織る女性のことで
その織物を織る機織り機が棚機だったのです。

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伝統的七夕の日は、必ず半月状の月が輝いていますが
 天の川を楽しむなら月が沈んだ後がおすすめ。 
午後11時半を回ると、空が一層暗くなります。 
その時刻、織姫と彦星は西の空の高さ約50度の付近に輝き
 向かって左に彦星、右に織姫が見え
二つの星が夜空でデートを楽しんでいるようです。 
そしてその間に、淡い光の天の川が見えるでしょう。

最後に、伝統的七夕の日の夕食は、さっぱりと素麺がよいでしょう。 
古くから宮中などでは、七夕に索餅(さくべい)というお菓子を食べて
厄除けをする風習があったそうです。 
索餅は素麺のもとになった食べ物とも言われるので
七夕に素麺を食べて厄払いも忘れずに。
 
2014年の伝統的七夕は8月2日(土) 

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関連記事 
 
「七夕と月と星」
http://lamoon.doorblog.jp/archives/50484303.html
「伝統的七夕の夜空」
http://lamoon.doorblog.jp/archives/51652305.html
「伝統的七夕(旧暦の七夕)」 
http://lamoon.doorblog.jp/archives/51325796.html 
 
伝統的七夕ライトダウン2014キャンペーン
参考 一部抜粋 『暦のこぼれ話』
七夕 - Wikipedia



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Posted by sara1116 at 13:44│Comments(0)clip!月の行事

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